【工場見学はできる?】サントリー知多蒸溜所の魅力と「知多」の味わいレビュー

ウイスキー

名古屋市の南、伊勢湾に面した臨海工業地帯。コンビナートの煙突が立ち並ぶ一角に、ひっそりと、しかし確かな存在感で日本のウイスキー文化を支える蒸留所があります。
その名も「サントリー知多蒸溜所」

実はここ、日本でも数少ない“グレーンウイスキー専門の蒸留所”
サントリーのブレンデッドウイスキーにおける“心臓部”とも言える存在なのです。


知多蒸溜所の誕生と使命 ― ウイスキー黄金時代の申し子

知多蒸溜所が誕生したのは、ウイスキー人気が高まりを見せていた1972年。
サントリーとJA全農が共同で設立した「サングレイン株式会社」によって計画され、翌1973年に操業を開始しました。

グレーンウイスキーに特化したそのコンセプトは当時としては非常に先進的であり、以来半世紀にわたりサントリーのブレンド技術を支える原酒を供給し続けています。

2019年には「サントリー知多蒸溜所株式会社」へ社名変更しましたが、出資比率は今も50%ずつという異業種協業のまま。
こうした背景からも、知多蒸溜所がいかに独自性のある存在かが伺えます。


蒸留の要:30メートル級の“4塔式連続蒸留機”

知多蒸溜所の心臓部とも言えるのが、4塔式の巨大な連続蒸留装置。
ビルのようにそびえ立つこの装置は、以下の4つの塔で構成され、用途に応じて組み合わせを変えながら多彩な酒質を生み出しています。

  • モロミ塔(シーブトレイ式)
  • 抽出塔
  • 精留塔(バブルキャップ式)
  • 精製塔(銅製バブルキャップ式)

この設備により、以下のような個性豊かな3種のグレーン原酒が造られます:

  • ヘビータイプ:モロミ塔+精留塔
     濃厚な穀物香、かつお節のような旨味のニュアンスも
  • ミディアムタイプ:モロミ塔+抽出塔+精留塔
     まろやかでバランスの良い味わい
  • クリーンタイプ:4塔すべてを使用
     ピュアで軽やか、ほのかに甘い風味

まるでオーケストラのように、設備の組み合わせと蒸留技術で複数の酒質を巧みに奏でているのです。


2022年、カフェ式蒸留機導入でさらなる進化へ

近年のクラフトウイスキーブームも受け、2022年には伝統的なカフェ式蒸留機も導入。
この方式は原料の風味を豊かに残す特性があり、知多蒸溜所に新たな個性をもたらしました。

さらに、粉砕機や糖化タンクの増設により、仕込み能力も飛躍的に向上。
知多の可能性は、今なお進化を続けています。


知多ならではの自然の恵み ― 水と原料

ウイスキーづくりに欠かせないのが仕込み水と原料

知多蒸溜所では、木曽川上流から引かれる「愛知用水」を使用しています。
硬度18mg/Lという超軟水は、クリアで雑味の少ないウイスキーづくりに理想的。

主原料はアメリカ産イエローデントコーンと、糖化用にフィンランド産の大麦麦芽
これらを用い、50〜85時間という長めの発酵で、香味豊かな酒質を引き出します。


熟成は別の地で ― 山崎・白州・近江の熟成環境へ

知多蒸溜所には貯蔵庫がなく、蒸留された原酒は山崎・白州・近江へと運ばれて熟成されます。
バーボン樽を中心に、スパニッシュオーク樽やワイン樽などを使用し、多彩な熟成を経て、それぞれ異なるキャラクターを備えた原酒が生まれます。

異なる気候・湿度環境での熟成も、味わいの奥行きを生む要因の一つです。


シングルグレーン「知多」 ─ グレーンが主役になる時代

2015年、ついに知多蒸溜所の名前を冠したウイスキーが誕生しました。
それが シングルグレーンウイスキー「知多」。繊細で上品な香味と飲みやすさで一躍人気商品に。

知多

  • アルコール度数:43%
  • 香り:バニラや白い花、米飴のような甘やかさ
  • 味わい:柔らかで軽やか、ドライでキレのある口当たり
  • 余韻:クリーンで爽やかに消える後味
  • おすすめの飲み方:レモンを絞ったハイボールで、料理との相性も抜群


一般見学は非公開、でも“知る人ぞ知る”存在

残念ながら、知多蒸溜所は一般見学には対応していません。
そのためその姿はあまり知られておらず、どこか謎めいた存在でもあります。

しかしそのぶん、知多のウイスキーに込められた技術と歴史を知ることで、グラスの中の一杯により深い意味を見出せるはずです。


おわりに ─ “脇役”から“主役”へ

サントリーのブレンデッドウイスキーを支える“縁の下の力持ち”として、長年活躍してきた知多蒸溜所。
今では「知多」ブランドとして、グレーンウイスキーの繊細さや美しさを世に示し、“名脇役”から“主役”へとその存在感を高めています。

次にウイスキーを選ぶとき、「知多」を手にとってみませんか?
透明感あふれるその味わいに、きっと風のような優しさを感じることでしょう。

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