江井ヶ嶋蒸留所とは?あかしウイスキーの評価は?テイスティングレビュー

ウイスキー

関西の酒文化を支えてきた老舗酒造「江井ヶ嶋酒造」。その本拠地は、兵庫県明石市の瀬戸内海沿いにあります。創業は延宝7年(1679年)までさかのぼり、日本酒蔵として長年親しまれてきましたが、実は1919年という早い時期にウイスキー製造免許を取得しており、これはあのサントリー(旧・寿屋)よりも早かったという事実をご存じでしょうか?

今回はそんな「江井ヶ嶋蒸留所」や商品について特集します!

明石の潮風が香る「日本のアイラ」

江井ヶ嶋蒸留所が位置するのは、播磨灘を望む明石市の浜手地区。晴れた日には淡路島を望む絶景が広がります。この地の特性はウイスキー造りにも最適で、六甲山系からのミネラル豊富な水と、穏やかな海風に恵まれた気候は、原酒に独特のやわらかさと海のニュアンスを与えます。

その香りと風味から、江井ヶ嶋蒸留所は「日本のアイラ」とも称されており、スモーキーな愛好家にも注目されています。

明治の創業者が見据えた未来

江井ヶ嶋蒸留所の母体である江井ヶ嶋酒造は、1888年(明治21年)創業。戦争や経済の激動期を乗り越えつつ、1919年にウイスキー蒸留をスタートさせた先見性は驚くばかりです。

その後、1963年には山梨にワイナリーを設立し、現在では清酒・焼酎・ワイン・ウイスキーを手がける総合酒類メーカーとして、国内外から高い評価を得ています。

「ホワイトオーク」と地ウイスキーの原点

江井ヶ嶋酒造が最初に発売したウイスキーは「シラタマウイスキー」(後のホワイトボール)。本格的な自社蒸留は1961年から開始され、1970年には年間100万本超を生産するなど、昭和の地ウイスキーブームをけん引しました。

その後1984年には「ホワイトオーク蒸留所」が竣工し、ウイスキー製造に特化した体制が整います。しかしブーム終焉後は縮小し、日本酒の仕込みがない夏季限定でのウイスキー製造が続きました。

再始動した江井ヶ嶋蒸留所

そして2019年、クラフトウイスキーブームに呼応して蒸留所は「江井ヶ嶋蒸留所」へ改称。新たにポットスチルを導入し、日本酒貯蔵庫を熟成庫に改修するなど、再び本格的なモルトウイスキー造りに取り組んでいます。

現在では年間200回を超える仕込みを行い、国内外のファンから注目される蒸留所へと再浮上しています。

「酒母立て」による独自の発酵

江井ヶ嶋蒸留所の最大の特長は、日本酒由来の伝統技術「酒母立て」をウイスキーに応用している点。これは酵母を効率的に培養する技術で、発酵力を維持しつつ酵母の使用量を抑えることができます。

発酵時間も曜日によって細かく調整され、月〜水曜仕込みは66時間、木〜土曜仕込みは90時間と、緻密な設計が施されています。

ポットスチルと独特なコンデンサー

蒸留には、2019年導入の三宅製作所製ポットスチル(初留器5,000L/再留器3,000L)を使用。再留では7時間かけて丁寧に蒸留され、72〜65%の範囲でミドルカットされることで、繊細で奥行きのある原酒が生まれます。

特徴的なのは、シェル&チューブ型コンデンサーの太く丸い形状で、冷却効率と風味への影響も個性的です。

テイスティングレビュー

今回は「あかし」シリーズと「江井ヶ嶋」シリーズを飲み比べてテイスティングノートを作成しました。是非ご参考ください!

あかしレッド

特徴
あかしレッドは、ブレンデッドウイスキーで、価格帯の手頃さから日常的に楽しめる一本。地元兵庫の自然と伝統が詰まった一杯で、軽やかな口当たりと穏やかな味わいが特徴です。

香り
最初に感じるのは穏やかな穀物の甘みと、ほんのりとしたシトラスの爽やかさ。続いてキャラメルやトフィーの甘さが立ち上がり、軽やかなウッディな香りが全体をまとめています。


口に含むと、滑らかな口当たりとともに、穏やかな麦芽の甘みと軽いバニラの風味が広がります。ややドライなフィニッシュに向かって、ほのかなスパイス感も感じられます。

余韻
ミディアムショートで、軽やかな甘さが心地よく続く一方で、わずかな苦味と木樽由来のほのかな渋みが後に残ります。


ホワイトオークあかし

特徴
ホワイトオークあかしは、江井ヶ嶋酒造の定番ラインのひとつ。シングルモルトを中心に、グレーンウイスキーをブレンドし、バランスの取れた味わいが特徴。コストパフォーマンスの高さでも人気の一本です。

香り
フレッシュな洋ナシや青リンゴのようなフルーティーな香りが最初に広がり、その後にバニラやキャラメルの甘みが追いかけます。微かなオークのウッディさと、穏やかなスパイスが全体を引き締めています。


口当たりは柔らかく、最初に甘いモルトの風味が広がります。続いて、熟した果実やハチミツのような甘みが強まり、ほのかなシトラスの酸味と樽由来の軽いタンニンがバランスを整えます。

余韻
ミディアムで、甘さとフルーティーなニュアンスが長く続く一方で、最後にはほのかなオークの渋みが余韻を締めくくります。



ホワイトオークシングルモルトあかし

特徴
このウイスキーは、シングルモルトとしての純粋な風味を追求した一本。瀬戸内海の温暖な気候で熟成され、海風の影響を感じさせる独特のキャラクターが魅力です。

香り
芳醇なバニラとキャラメル、トロピカルフルーツの甘やかな香りが主体。奥にはウッディでドライなニュアンスが重なり、ほのかな潮風を感じさせます。


口に含むと、バニラや熟したリンゴ、黄桃のような甘さが広がり、次第にスパイシーなオークとシナモンが現れます。全体としてはクリーミーでリッチな味わい。

余韻
長めの余韻で、フルーティーな甘みとほのかなウッディな苦味が続き、最後に微かに潮のニュアンスが残ります。


江井ヶ島 シングルモルト バーボンバレル 8年

特徴
8年間バーボン樽で熟成されたシングルモルト。バーボン樽由来の甘さとウッディさが絶妙に調和した、濃厚で複雑な味わいが特徴です。

香り
最初に広がるのはバニラやココナッツ、熟したバナナのような甘み。次第にキャラメル、ハチミツ、ほのかなトフィーの香りが混ざり合い、樽由来のオーク感が背景に感じられます。


口に含むと、リッチなバニラ、トフィー、キャラメルの甘みが広がり、続いてスパイス感とウッディな苦味がバランスよく絡み合います。しっかりとしたボディ感があり、複雑な余韻を楽しめます。

余韻
長く続く甘みとスパイスの余韻が特徴で、バーボン樽の影響が最後までしっかりと感じられます。


江井ヶ嶋 オールドシェリーバット12年

特徴
シェリーバットで12年間熟成されたリミテッドリリースの一本。59度という高いアルコール度数ながら、力強くリッチな風味が印象的。

香り
ドライフルーツや黒糖、チョコレートの濃厚な甘みが主張し、その奥にはレーズンやフィグのようなシェリー樽由来の香りが重なります。ほのかにスモーキーなニュアンスも感じられます。


口に含むと、濃厚なレーズンやプラム、ダークチョコレートのような力強い甘みが広がり、次第にスパイシーなペッパー感とほのかなタンニンが現れます。

余韻
長く力強い余韻で、シェリー樽由来の甘みとスパイスがしっかりと持続し、最後にほのかなビターさが心地よく残ります。


江井ヶ嶋 シェリーカスク7年

特徴
7年間シェリー樽で熟成されたシングルモルト。力強く複雑なフレーバーと深い色合いが特徴。

香り
レーズン、プラム、黒糖の甘みが中心にあり、チョコレートやナツメグ、シナモンといったスパイスも感じられます。樽由来のウッディさが奥に広がります。


力強く濃厚な甘みがあり、ドライフルーツやダークチョコレートの風味が際立ちます。次第にスパイスとほのかなタンニンが広がり、骨太な印象。

余韻
長く続く余韻で、ほろ苦さとシェリー樽の複雑な甘みがしっかりと残ります。



蒸留所見学ツアーについて

江井ヶ嶋蒸留所では、清酒蔵とウイスキー蒸留所の見学ツアーを実施しています(事前予約制)。

  • 実施日:週1回、午後2時から約90分
  • 定員:15名程度
  • 参加費:無料(試飲一部有料)
  • 見学内容:資料館、清酒蔵、蒸留設備、貯蔵庫、試飲室など

見学の予約・詳細は、公式サイトをご確認ください。

公式HP☞見学ツアー|江井ヶ嶋酒造|兵庫県明石市にある、日本酒「神鷹」をはじめ、焼酎・ワイン・ウイスキーの総合酒類メーカー


アクセス情報

  • 住所:兵庫県明石市大久保町西島919番地
  • 最寄駅:山陽電鉄本線「西江井ヶ島駅」より徒歩約10分
  • 駐車場:あり

まとめ|伝統×革新が生む“和のクラフトウイスキー”

江井ヶ嶋蒸留所のウイスキーは、300年以上にわたる酒造りの伝統と、常に新たな挑戦を続ける探究心が融合した、まさに“和のクラフト”そのもの。

スモーキーで奥行きのある味わい、瀬戸内の潮風を感じる風味、そして日本酒仕込みならではの繊細な甘み。
それらすべてが、1杯のウイスキーに凝縮されています。
是非試してみてください✨

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