本坊酒造 マルス津貫蒸溜所とは?ウイスキーの評価は?テイスティングノートは?

ウイスキー

― 本坊酒造「マルス津貫蒸溜所」の魅力とは? ―

鹿児島県南さつま市の山あいにひっそりと佇むマルス津貫蒸溜所。ここは、150年以上の歴史を持つ本坊酒造が2016年に設立した、同社にとって2つ目のウイスキー蒸溜所です。南国の温暖な気候のもとで熟成されるウイスキーは、力強くリッチな味わいを持ち、日本のウイスキーシーンで確かな存在感を放っています。


創業の地「津貫」で再始動したウイスキー造り

1872年、地元農産物の加工・販売業として歩みを始めた本坊酒造。1909年には、鹿児島を代表するサツマイモを原料にした焼酎造りを開始し、以降は伝統を守りつつ技術革新を続けてきました。

1949年、ウイスキー造りへと挑戦し、山梨や長野を経て、2016年、原点である鹿児島・津貫の地にウイスキー蒸溜所を開設。創業の地にウイスキー造りを再び根付かせたのです。


「津貫」×「信州」×「屋久島」――3つの熟成環境がもたらす多様性

本坊酒造のウイスキーが持つ奥行きは、3つの異なる熟成環境に支えられています。

  • 津貫:旧石蔵とラック式新倉庫の2種類の貯蔵庫を備える、温暖で昼夜の寒暖差が激しい南九州の山間部。
  • 信州(長野):標高798mの冷涼な地で、ゆっくりと熟成が進む。
  • 屋久島:2016年に設立された海に近いエージングセラー。潮風と湿度が原酒に独特の個性を与える。

このような“2蒸溜所・3熟成地”の体制により、地域ごとのテロワールを生かしたウイスキー造りが可能となっています。


津貫の風土が育てる、重厚で奥深い味わい

津貫蒸溜所は、蔵多山と長屋山に囲まれた盆地にあり、冬は冷え込みが厳しく、昼夜の寒暖差も大きいという特徴的な気候。この環境こそが、重厚で熟成感のあるウイスキーを育てる鍵となっています。

また、使用するポットスチルはすべてストレート型。初留器6,000L・再留器3,300Lで、いずれも背が低くラインアームが下向き。これにより得られるのは、ヘビーでどっしりとしたモルト原酒。加熱はスチームパーコレーター式、冷却には伝統的なワームタブを採用するなど、クラフトマンシップ溢れる造りが魅力です。


設備・製造のこだわり

  • 仕込み水:蔵多山系の清らかな伏流水
  • 原料処理:キュンツェル社製モルトミル
  • 発酵槽:6,000Lのステンレス製が5基
  • 酵母:ディスティラリー酵母、エール酵母などを用途に応じて使い分け

これらの設備と技術が一体となり、力強くも繊細なウイスキー造りを実現しています。


ウイスキーを味わう特別な空間「資常」と「常」

蒸溜所敷地内には、本坊酒造二代目社長・本坊常吉の旧邸を改装したショップ&バー「資常」があります。ここでは、蒸溜所限定ウイスキーの試飲・購入が可能。歴史が薫る空間で味わう一杯は、まさに“時を味わう体験”です。

さらに、1933年築の旧本坊家を改装した「常(TOKOSHIE)」では、美しい日本庭園を眺めながらウイスキーやカフェメニューを楽しむことができ、見学の締めくくりに最適な癒しの空間となっています。


自由見学と案内ツアーでウイスキーの世界へ

マルス津貫蒸溜所では、ガラス越しの自由見学が可能。さらに、知識豊富なスタッフによる無料案内ツアーも行われており、蒸留・熟成の工程を実際に感じながら学ぶことができます。見学後には「資常」「常」での試飲やお土産選びもお楽しみください。


注目のシリーズ「シングルモルト津貫」年号エディション

津貫で蒸留・熟成・瓶詰めまですべて行う、本坊酒造渾身のヴィンテージシリーズ

今回は飲み比べをした3種類の評価を行いました!

シングルモルト津貫 2025エディション

特徴
2025年リリースのシングルモルト津貫は、津貫蒸溜所の伝統と革新が融合した意欲作。厳選されたバーボンバレルとシェリー樽の原酒がバッティングされ、果実味と奥深いウッディなニュアンスが絶妙なバランスを形成しています。南国の豊かな風土を感じさせる熟成感が魅力です。

香り
初めに熟した桃やアプリコット、洋ナシの華やかなアロマが広がり、その奥にバニラやトフィーの甘さが続きます。ほのかなオレンジピールや焼きたてのパンの香ばしさが重なり、シェリー樽由来のレーズンやナツメグのスパイス感も感じられます。


滑らかな口当たりとともに、ドライフルーツやキャラメルの濃厚な甘みが広がり、ハチミツのようなコクとともに広がります。次第にシトラスの爽やかな酸味と軽やかなスパイスが現れ、バーボンバレル由来のクリーミーなバニラとオークのニュアンスがバランスよく融合。

余韻
長く続く余韻は、ダークチョコレートやウッディなタンニンがほのかに残り、最後にふんわりとした甘みが包み込むように消えていきます。


シングルモルト津貫 2022エディション

特徴
津貫蒸溜所が地元の風土と技術を活かして生み出した2022年エディション。伝統的な製法と現代的なアプローチが融合し、フレッシュでありながらも奥深い味わいが特徴です。

香り
青リンゴやレモンピールのような爽やかなフルーティーな香りに、シナモンやナツメグのスパイス感が絡みます。加えて、バニラやビスケットのような香ばしさが背景に広がり、ほのかなスモーキーさもアクセントに。


最初に感じるのはライトでクリアなモルト感。その後、シトラスや熟したリンゴのジューシーな甘みが広がり、次第にほのかなハーブやスパイスのニュアンスが現れます。穏やかなオークのウッディさとともに、優しいバニラの甘みが全体をまとめます。

余韻
フレッシュなフルーツ感が残る爽やかな余韻。最後にほのかな樽の渋みがアクセントとして加わり、心地よく締めくくられます。


シングルカスク 津貫 2018-2024 ナチュラルカスクストレングス

特徴
津貫蒸溜所の希少なシングルカスクリリース。2018年に蒸留され、6年間の熟成を経たカスクストレングスボトルで、個性豊かな原酒の力強さと繊細さを堪能できる1本です。

香り
力強いモルトの香りに加え、黒糖やダークチョコレートの濃厚な甘み。ドライプラムやレーズンのような熟成感あふれる果実の香りが際立ち、背後にはスモークしたオークやわずかなレザーのニュアンスが感じられます。


リッチでオイリーな口当たり。ドライフルーツや黒糖の濃密な甘みが広がり、次第にカカオやシナモンのスパイシーさが押し寄せます。深いウッディな要素とともに、ミズナラのようなエキゾチックなスパイス感が心地よく響きます。

余韻
長く続くパワフルな余韻。ドライフルーツの甘みとウッディなタンニンが絡み合い、最後にわずかなスモーキーさが余韻を引き締めます。



マルスウイスキーの未来と進化

70年以上にわたって受け継がれてきた蒸留技術。その系譜は、津貫でさらなる深化を遂げようとしています。南国の情熱と冷涼な気候が生み出す、唯一無二のジャパニーズウイスキー。それは、テロワールの味わいを超えた“物語”を持つ一杯です。


「津貫」でこそ味わえる一杯を

現地で味わうウイスキーには、風・光・空気と共鳴した深い感動があります。本坊酒造の原点・津貫。その土地に根ざしたウイスキー造りは、これからも挑戦と深化を続けていくでしょう。

ウイスキー好きならずとも心を奪われる、津貫蒸溜所でのひととき。

ぜひ一緒にウイスキーライフを楽しみましょう✨

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