SAKURAO DISTILLERY(桜尾蒸溜所)の魅力とは?桜尾・戸河内ウイスキーの評価

ウイスキー

広島の自然と歴史が息づくウイスキーの新星 ― SAKURAO DISTILLERY(桜尾蒸溜所)

広島県廿日市市松屋に位置するSAKURAO DISTILLERY(桜尾蒸溜所)は、瀬戸内海を望む絶景のロケーションに恵まれ、対岸には世界遺産・厳島神社がそびえ立つ、まさに美しい自然環境に囲まれた場所にあります。2017年に設立されたこの蒸溜所は、地元の自然や歴史を最大限に活かし、革新と伝統を融合させたウイスキー作りに挑戦しています。その背後には、かつて「中国醸造」として親しまれ、2021年にサクラオブルワリーアンドディスティラリーと社名変更した運営会社の情熱が込められています。

今回はそんな蒸留所&ウイスキーを特集します!


歴史と背景:100年を超える酒造の伝統

SAKURAO DISTILLERYのルーツは、1918年に創業された「中国醸造」に遡ります。地元の酒造メーカーたちの協力のもと設立され、1938年には株式会社化。その後、ジンの製造を開始し、全国的な名声を得ることに成功しました。しかし、ウイスキー製造は一時中断され、1980年代の「ウイスキー冬の時代」には製造が停止。その後も地域の需要に応じて「戸河内」や「グローリーエキストラ」などを展開し、再びウイスキー製造への挑戦が始まります。そして、2019年にウイスキー造りが再開され、SAKURAO DISTILLERYという新たな蒸溜所が誕生しました。


伝統と革新の製造過程:精緻な仕込みと高度な蒸留技術

SAKURAO DISTILLERYのウイスキー作りにおける最大の特徴は、そのこだわり抜いた品質です。地元・小瀬川水系の伏流水を仕込み水として使用し、1トンの麦芽でワンバッチ仕込みを行います。使用する麦芽も多彩で、ノンピートからヘビリーピート(50ppm)まで幅広い選択肢を取り入れています。特にヨーロッパ製の高品質な糖化槽や発酵槽を使用し、温度管理が精密に行われます。

蒸留では、ホルスタイン社製のランタン型ポットスチルを使用し、再留時にはハイブリッドスチルを採用。これにより、桜尾蒸溜所は「シングルブレンデッドウイスキー」のような新たなウイスキーの形態の開発にも意欲的に取り組んでいます。


熟成の秘密:海と山の二つの熟成庫

SAKURAO DISTILLERYのウイスキーには、他にはない特徴的な熟成環境が整っています。蒸溜所内にある「桜尾貯蔵庫」は乾燥した環境で熟成される一方、車で1時間ほどの場所には、湿気の多い中国山地の廃トンネルを改装した「戸河内貯蔵庫」も使用され、ここでは湿度が高いため、ウイスキーが樽内で水分を吸収し、自然にアルコール度数が低下します。

海の熟成庫(桜尾)
瀬戸内海の潮風を受け、温暖な気候で熟成されたウイスキーは、ほんのりとした塩気やミネラル感が特徴。スムーズでバランスが取れた味わいが広がります。

山の熟成庫(戸河内)
中国山地の静かな空気と森林の香りがウイスキーに静かな深みを与えます。バーボン新樽で熟成されたウイスキーは、クリーンでキレのある味わいが特徴で、穏やかなフィニッシュが印象的です。


多彩なラインアップとテイスティングノート

SAKURAO DISTILLERYのラインアップは、ウイスキー愛好者の心を掴んで離しません。2021年7月には、初リリースされた「桜尾 Ist Release CASK STRENGTH」と「戸河内 Ist Release CASK STRENGTH」が話題となり、その後もスタンダードボトルのシングルモルト「桜尾」や「戸河内」などが登場しています。

シングルモルト 桜尾

海の熟成庫で育まれたこのウイスキーは、バニラや果実の甘さ、ピート由来のスモーキーさが特徴。塩味とピートのバランスが絶妙で、ウッディーで濃厚な余韻が長く続きます。

  • 香り
    バニラ、トロピカルフルーツ(パイナップルやマンゴー)を思わせる甘い香りに加え、海風を感じさせる塩気と煙の香りが漂います。ピートのスモーキーさが深く、リッチな印象を与えます。
  • 味わい
    口に含むと、滑らかなテクスチャーで、バニラの甘さとフルーツの酸味が心地よく広がります。ほのかなスモーキーさと塩味がアクセントとなり、複雑で深みのある味わいです。
  • 余韻
    ウッディーでスモーキーな余韻が長く続きます。柔らかな塩味と、ほのかに残るピートの香りが後味として印象的に残り、心地よい余韻を楽しめます。


シングルモルト 戸河内

山の熟成庫で熟成されたこのウイスキーは、森林を思わせる爽やかな香りと、クリーンでキレのある味わいが特徴です。穏やかなフィニッシュが印象的で、すっきりとした後味が楽しめます。

  • 香り
    新緑を感じさせる爽やかな香りが立ち上り、森林の湿った空気と花々の香りが優しく広がります。フレッシュな草の香りと、軽やかなスパイスがアクセントとなっています。
  • 味わい
    すっきりとした飲み心地で、クリーンな味わいが特徴です。青リンゴやシトラスのフレッシュな果実味が広がり、軽やかな甘さと酸味がバランスよく調和しています。フィニッシュにかけて、少しスパイシーな感覚が感じられます。
  • 余韻
    穏やかなフィニッシュで、すっきりとした後味が楽しめます。余韻は軽く、草のような爽やかな香りとともに、清々しい印象を残します。


シングルモルト 桜尾 シェリーカスク

50%の高いアルコール度数にもかかわらず、まろやかでエレガント。シェリー樽由来の甘さとスパイシーな香りが広がり、濃厚な味わいとスモーキーな余韻が続きます。

  • 香り
    シェリー樽由来の豊かな果実香、ドライフルーツやレーズン、そしてスパイス(シナモン、ナツメグ)の香りが広がります。ピートの煙がそれらを包み込み、奥行きのある複雑な香りを演出します。
  • 味わい
    アルコール度数が高いにもかかわらず、滑らかな口当たりで、シェリーの甘さとスパイシーさが見事に調和しています。レーズンやプラムの濃厚な果実味と、ピート由来のスモーキーな味わいが豊かに広がります。
  • 余韻
    シェリー樽由来の甘さとスモーキーなピートの香りが長く続き、力強い余韻を残します。高いアルコール度数にもかかわらず、余韻が滑らかで、エレガントな仕上がりです。


シングルモルト 戸河内 Misty

2024年に数量限定でリリースされた「戸河内 Misty」は、霧が立ち込める熟成庫で静かに熟成された原酒を使用し、その名の通り“幻想的”ともいえる繊細な香味が特徴です。

  • 香り
    白い花やシトラス、青リンゴのようなみずみずしい香りに、ミントやユーカリを思わせる涼やかさが重なります。全体的にクリーンで爽快。
  • 味わい
    舌触りは軽やかで、レモンピールや白ブドウのような果実の酸味と甘みが絶妙に共存します。アルコール感は控えめで、するすると喉を通る透明感のあるテクスチャー。
  • 余韻
    短くも印象に残る余韻には、白胡椒のような穏やかなスパイスと、冷涼感のあるミネラルな印象が残ります。夏場にも心地よく楽しめる一本です。

見学ツアーと体験:ウイスキーとジンの製造過程を学ぶ

SAKURAO DISTILLERYでは、見学ツアーが開催されています。日本語ツアーは①10:30~ ③15:00~の1日2回実施、事前予約が必要で、料金は2,000円。見学では、ウイスキーだけでなくジンの製造過程も学べ、試飲ではウイスキーとジンの両方を堪能できます。

公式サイト☞DISTILLERY TOUR | SAKURAO DISTILLERY


まとめ:広島の自然を詰め込んだウイスキー

SAKURAO DISTILLERYのウイスキーは、広島の自然と100年以上の酒造の歴史を凝縮した一杯です。海と山、異なる熟成環境で育まれたウイスキーの個性をぜひ味わってみてください。広島を訪れる際は、この魅力的な蒸溜所を訪れて、その特別なウイスキーを体験しましょう。

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